スコティッシュカントリーダンスとGigue
2018.01.07

現代のアイリッシュダンス
動画1アイリッシュダンス

スコティッシュカントリーダンス
動画2スコテッシュカントリーダンス

↑それぞれの画像をクリックすると動画で見られます


ネットで見つけた動画である。アイリッシュダンスはその名の通りアイルランドの民族舞踊である。そこにはスコットランドの伝統的舞踊、スコテイッシュカントリーダンスの影響が多々見られる(*1)。スコテイッシュカントリーダンスの起こりについては諸説あるが、スコットランド王国(*2)での衛兵交代からきている、という説がある。私はこの説を支持している。というのは元々のスコテイッシュカントリーダンスは4人ずつが向かい合った8人で踊られ、躍りながら立ち位置を入れ替わってゆく、このとき踊っていない者はきちんと直立した姿勢を保っているからである(衛兵交代の隙を狙って宮殿に向かってくる外敵は見逃さない)。
この動画のものは現代的になって、若い女の子のお色気を前面に出したものになっているが、それでもスコテイッシュカントリーダンスの基本ステップは守られている。スコテイッシュカントリーダンスは音楽のリズム・テンポにより

1)Reel(リール)2/4、または4/4拍子のテンポが速い踊り
2)Jig(ジグ)6/8拍子のテンポが中庸~やや速い踊り、9/8拍子(3拍子系)のSlip Jigというのもある
3)Strathspey(ストラスベイ)2/4または4/4拍子の比較的テンポがゆったりした踊り

の3つに大別されるが、どの躍りもステップは同じである。(譜例1の1)(*3)。その結果、ジグでは躍りのステップと音楽に微妙なずれが発生する。(譜例2)



譜例1 スコティッシュカントリーダンスのステップ(リズム譜)

譜例2 ジグ(Jig、gigueのリズム)

多くの古典組曲の終曲になっているGigue(ジーグ)は、このJigが母体である(Gigueというスペルは当時流行したフランス語風の綴り、発音からくるものである)
譜例2はJ.S.Bachのフランス組曲第4番のGigueである。この曲は1990年11月、私が富山に来て最初にやったリサイタルでアンコールで弾いたものだが、当時はこれを譜例2の1のようなアーティキュレーションで演奏した。今思い起こしてみると、まるでJig(Gigue)のことがわかっていない演奏である。このアーティキュレーションだとたしかに快いテンポには聴こえる。ただJigで大事なのは音楽のリズムと踊りのステップのリズムのズレである。これを表現するためにアーティキュレーションを譜例2の2のように変えてみた。今これで練習しているが、現在の私の手指では少々難しい。


譜例3 J.S.Bachフランス組曲第4番のGigue


譜例3の1 アーティキュレーション例(1)


譜例3の2 アーティキュレーション例(2)


尚、私がスコティッシュカントリーダンスをはじめ、ハンガリー、ポーランドなどヨーロッパ各地の民族舞踊に興味を持っていたのは40年ほど前の大学生の頃である。その頃、民舞研に友人もいたりしたこともある。これらの動画を見ていて当時を懐かしく思い出して思うことを綴ってみた。

*1)現在ではアイリッシュダンスとはアイルランド民族舞踊を基本としながらもショー用、競技用にアレンジされたものを指すことが多い
*2)スコットランドは843年(ケネス1世の時代)より1707年に合同法によりグレートブリテン王国が成立するまでは独立した王国であった。
*3)ストラスペイではしばしば譜例1の2のようなステップが見られるが、これは音楽のテンポがやや遅いことから、自然にこうなるものと思われる

新年のごあいさつ
2018.01.01

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