モンゴル調査研究(2)
2017.09.19


今日からモンゴルでの活動開始。本日はモンゴル国立文化芸術大学訪問の予定である。この大学はウランバートル市内環状道路沿いにあり、滞在先のDREAM Hotelから徒歩で行かれる範囲である。2016年の渡航時にも器材運搬でお世話になったカルガさんの奥様がこの大学の音楽の教授であり、今年もカルガさんにアポ取ってもらって出かけた。昨年はモンゴルの民俗音楽を扱っている研究室を広範に回ったが、今回は洋琴(ヨーチン)のアルタンジャガル教授の研究室を中心にお邪魔した。



このヨーチンという楽器は上の写真でわかるとおり、弦が横向きに張られていて、弦を支える駒がある点では筝(琴)に似ているが、柔らかい木製のマレットで弦を叩いて演奏する点ではピアノに近い。同様の楽器は中国にもあり、また東ヨーロッパのハンガリー、ルーマニアで見られるツィンバロンも同じ構造で奏法も同じである。インド北部にいたロマが放浪民族となり、中央アジアを通ってヨーロッパに入り込んだ歴史と考え合わせると、もしかしたらこの楽器はロマによって中国からモンゴルに持ち込まれ、さらにヨーロッパへと伝わったものかもしれない(現時点ではあくまで私の妄想の域を出ないが)。ということで、今、私が最も興味をいだいている楽器である。

↑の画像をクリックすると演奏の動画が再生されます(お使いのパソコン・ネット環境によりダウンロードにかなりの時間がかかる場合があります)。
演奏はこの大学で洋琴の実技を担当していらっしゃるアルタンジャガル教授



アルタンジャガル先生はたいへん気さくな方で、洋琴とピアノで合奏しようということになり、こんなことになってしまいました(↑の画像をクリック)。歌っているのは私の息子です。今回の調査行に同行した手伝いの若者の一人です(汗)



この後、日本語が上手なアルタンジャガル先生(以前、洋琴の講師として千葉県にいらしたことがあるそうです)の案内でこの大学の他の先生のレッスンの様子を見せていただきました。上の画像はオルティンドーのチョドンチェチェ教授(カルガさんの奥様)のレッスンの様子です。クリックすると動画で見られます。
この日の夕方カルガさんから「私の奥さんからメッセージです。今日は大きいで怒ってるみたいでごめんなさい」と。「いえ、私の世代は昔、こうやってピアノ習ったな、と懐かしかったとお伝えください」とお応えしました(*1)。



ザグダ教授のホーミー(*2)のレッスンの様子です。緊張させた喉から出る笛のような音、緊張させた舌により口の中に2つの部屋を作ることで2声のように聴こえる声、チベット仏教のお経みられる地声を超える低音に特徴があります。↑の画像をクリックするとどんな声(音)かわかります。

この大学には2015年(昨年)もお邪魔していて、今日会った3人の教授には昨年も会っています。大変嬉しかったのは3人とも私のことを覚えていてくれたことです。なので今年はモンゴルの民俗音楽についてさらに深く学びたいという私の意向も理解してもらえました。そのためか昨年は各研究室でいちばん上手と思われる学生の演奏を聴かせていただいただけなのが、今年はレッスンを見学させていただいたり(この音をどうやって作るのかがわかりました)、先生自らが演奏してくれたりもしました。大変有意義な一日となりました。

(注)
*1)富山大学教育学部が人間発達科学部へと改組された際に音楽科が廃止されて以後10年以上、このように真剣に演奏に向き合うレッスンは私もしなくなっています。
*2)モンゴル語で「喉」とか「動物の腹の皮」の意味で、一班的には中国内モンゴル自治区からモンゴル国にかけての地帯の独特な発声法のことです。

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